元日本代表ヘッドコーチ= エディー・ジョーンズ(現イングランドヘッドコーチ)が指揮するイングランドはラグビーW杯前のサマーウォームアップマッチで世界ランキング2位のアイルランド(ジャパンと同グループ)に57-15と快勝した。勢いを付けたのは前半12分アイルランド陣10m奥左サイドセットスクラムからSH(スクラムハーフとBW(ブラインドウィング)を絡めたバックスのスピードに乗ったワイドアタックムーブ でWTBジョー・ゾカナシンガの右隅へのトライだった。この完璧なセットからのアタックムーブ を解説すると共に、ディフェンスはどう対応するべきだったのかを考えてみたいと思います。
ダミーランの縦へのスピードを存分に生かしたバックラインアタック!
- 8-9とBWが参加することによって7対5状況を作り出す。
- 9がDF10に対ししっかりアプローチをかけ引き付ける。
- 12はスピードを付けたアプローチで9に近い位置にダミーラン
- 10はDF13に詰める間を与えないデープポジションでレシーブし、DF12.13の間を狙ってラン。DF13を引き付ける。
- 13はスピードを付けたアプローチで10に近い位置にダミーラン。DF13は10&13に完全に引きつけられプッシュ(スライド)する事が出来ない。
- BW11はDF11に詰める間を与えないデープポジションでレシーブする。DF11はジャムイン(詰める)するも
この時点でアウトサイドバックスによる 3 対 2 が出来あがりコーナーへのフィニッシュとなる。
この縦への入り方の優位性(ダミーランのアプローチ)
イングランド、オーストラリアワラビーズ そして最もこのアタックシェイプ(陣形/攻撃の形)を多用するのはラグビーリーグです。下の優位性についてグレー/パープルの見出しもご覧下さい。
ディフェンスサイド(アイルランド)にミスは無かったのか?
決定的なミスは、スクラムが少し回りNo.8ブニポラがボールをピックした瞬間、本来オープン側に行くべきSHコナ・マリーがショートサイドへのアタックと思い逆サイドへ、BW14ジョーダン・ラーマーもショーサイドへ動かされてからのカバーディフェンスとなり、コーナへのトライを防ぐことは出来なかった。
ディフェンスサイド どのように修正するか?
- 先ず考えなければならないのは、イングランドのアタック人数7に対してDFを6にするにはどうするか。
- 7対5でのディフェンスは、今回のように詰め切れず数的優位を作られる。一か八かの本当のギャンブルをするのであれば13がAT13を捨て速い上がりで10のところで潰すか、かなりの引きでツープッシュ( 2人スライド)し、ゴールラインギリギリで止めるのを狙うか、いずれにしてもどちらもゴール前というスチュエーションを考えると7対5はロストトライ率は高くなる。
- 7対6になればワンプッシュ(1人スライド)同人数になりディフェンスし易くなる。
- 基本的には下のシートのように9or 14から13の4人でDF9から13の5人を止める。
- 基本DF11はラスト2(外から2番目)DF15はラスト(大外)をノミネートする。
オプション1・2のディフェンスにはデメリットどちらもデメリットはあり
- オプション1はAT8のショートサイドアタックはゲインオーバーの可能性は低いが、DF14がAT9へのプレスが弱くなる。
- オプション2は DF9はオフサイドラインが前からなのでAT9へのプレスを早くかけられる。AT9に対し早いプレスをかけることでのメリットは、早くボールをパスしなければならないので、DF10がパス軌道を見てAT12orAT10のどちらをコミットするかの判断が正確かつ早くできる。従ってDF12・13もスライドし易くなり、ディフェンスが揃う。ショートサイドのDF14はNo.8のアタックに対してはある程度のゲインは想定内とする。
ファーマーオールブラックスヘッドコーチ=グラハム・ヘンリー氏は「ディフェンス力はヘッドコーチのフィロソフィー(哲学)が大きく左右する」とおっしゃってました。エリアやアタックの陣形よってDFの陣形やスタイルをどのようにするか、ヘッドコーチから選手へのディフェンスフィロソフィーの落とし込みが極めて重要であることは間違いありませんね。
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